火を操る心地よさを、一度でも味わったことがある人にはわかると思います。難しいと思っていた焚き火や焚き付けが、思い通りにできるようになるには、経験や知識の蓄積が物を言います。昔は火をきちんと扱えるようになったら一人前だって認めてくれました。

子供のころ、花火を初めて手にしたとき、ちょっとおっかなびっくりだったけど、とっても興奮したのを覚えていると思います。でも大人が火の着け方から持ち方、消し方まで、ちゃんと教えてくれなかったら、お友達に火傷を負わせていたかもしれません。火の取り扱いをほんの少し覚えたころです。

薪を割るとき、どうやったらうまく割れるのか、薪割り斧の刃の当て方だったり、丸太の木目だったり、色々工夫すると思います。それだけじゃなく、自分や周りに危険が及ばないよう万全な安全対策を施し、怪我や事故の予防に努めるはずです。

初めて一人で刃物を持ったとき、鉛筆を削るためにナイフを持ち、腕の力ではなく、指先をナイフの峰に添えて、そっと押し出す感覚を思い出す人もいるでしょう。まな板の上にニンジンを置き、指を丸めて添え、輪切りができたときのドキドキを覚えている人もいるかもしれません。刃物の扱いも、ちゃんと大人が教えてくれました。

火はとってもありがたいものです。思い通りに火を操ることができると、とっても満足します。斧のような刃物も便利で魅力的です。でもリスクが伴います。そのリスクを子供たちや周りの未経験者に教えてあげる責任があります。リスク回避にも責任を負わなければなりません。

火が危ないと思って、子供を隔てて遠ざけようとする人もいます。でも、それって大人の責任を放棄している気がします。火の本当の怖さを知って、火の本当のありがたさや楽しさを知る。言い換えれば、薪ストーブは大人の責任を身につける、「大人を磨くツール」なんですね。