薪ストーブや暖炉を作る素材

薪ストーブは鋳物で暖炉はレンガだとイメージされる方が結構多いですね。薪ストーブも暖炉も、実はいろんな素材が使われます。鋳物がメインの薪ストーブもあれば、主に鋼板から作られるもの、鋳物と鋼板を組み合わせた薪ストーブや、さらに石やタイル、レンガやコンクリートなども組み合わせたり。それと多くの薪ストーブや暖炉には、薪が燃えている炎を見せるためにガラスも使われいます。

素材や材料によって薪ストーブや暖炉の見た目の印象も違いますが、性能の違いはどこにあるのでしょうか? 薪ストーブや暖炉のメーカーも、それぞれが素材や技術へのこだわりを持っているので、キャラクターの違いに現れていますね。

素材特性の比較

薪ストーブや暖炉に使われる素材の物理的な特性や特徴の比較です。

素材 比重 比熱
(J/kg ℃)
熱伝導率
(W/m K)
融点
(℃)
ブリネル硬度
鋳物(鋳鉄) 7.21 460 48.0 1200 240
鋼板(鉄) 7.87 460 70.0 1500 140
ソープストーン 2.7 1200 1.7
耐火レンガ 1.8 950 0.6
タイル 2.4 800 1.4
コンクリート 2.0 1050 0.9
1 4200 0.6 0

比べてみますと、鉄素材の方が比重が高く、熱伝導率も高いことがわかります。一方の石やレンガ、コンクリートといった素材は、比重が水の2倍から3倍程度で、熱伝導率は鉄ほど高くない代わりに比熱が大きいことがわかります。

よく言われる鋳物と鋼板の比較ですが、単位重量あたりの蓄熱量は変わりがありません。熱伝導率が少し異なりますので、あったまる速さと放熱の速さは鋳物よりも鋼板の方が少し優れていて、鋳物の方が少しだけ暖まりにくく冷めにくいです。もうひとつ鋳物の方が熱に強いと言われる点ですが、溶ける温度(融点)に関しては鋼板の方が高いこともわかります。でも蓄熱という点では鋳鉄も鋼板も、石やコンクリートには絶対に敵いません。余談ですが、比熱が大きくてあったまりにくく冷めにくいのが、鉄よりも石よりも、水だということがわかります。

鋳物の利点

鋳物は、砂で作った型の中に高温で溶かした金属を流し込んで、冷まして固まった状態です。薪ストーブでは鉄の鋳物、鋳鉄が使われています。見た目で特徴的なのは、型に使われた砂粒のあとが表面に残ることです。その為、ザラザラした表面になっているので、細かく見ると見た目の大きさよりも表面積は広くなっています。表面積が広くなるということは、すなわち放熱面積も広くなります。

鉄を溶かして型に流し込むため、割と複雑な形状にも対応できます。ずっしりとした古典的なデザインの薪ストーブは、ほとんどが鋳物で作られています。

鋳物でできた薪ストーブ:IRON DOG / NORFLAM / DUTCHWEST / Majestic

鋼板の利点

鋼板は、熱を加えて柔らかくした鉄の塊を、大きなローラーで圧力をかけて薄く熨したものです。鋳鉄と比べると少しだけ熱の伝わりが早いのと、材料を薄くすることができるので、薪ストーブの場合には点火から放熱までが素早くなります。表面が滑らかな素材なので、見た目にも重たく感じさせずにモダンで軽やかな雰囲気になります。

鋳物は溶接しにくい素材ですが、鋼板は溶接によって組み合わせたり、曲げることもできるのでカーブした造形にも向いています。鋼板という材料は大規模なプラントでしか製造できないため、品質が安定しているのも特徴です。薪ストーブの軽量化もしやすく、建物への重量的な負担も少なくなります。

鋼板でできた薪ストーブ:HWAM / WIKING / Drolet

石材やレンガ等の利点

石材は自然素材ですし、レンガやコンクリートもなんとなく人間味が感じられる素材です。工業製品というよりは人の手が加えられた素材感が魅力ですし、外装に使われると柔らかな雰囲気にもなります。レンガは耐火素材というイメージがあります。石材やコンクリートは耐火素材というよりも仕上げ材として使われます。いずれも比熱が大きくてたくさんの熱を蓄えておくことができるのが最大のメリットです。

暖まるまでには時間がかかりますが、その代わり一度暖まると長い時間放熱し続けるので、薪ストーブや暖炉の中の薪が燃え尽きた後も暖かさをキープすることができます。その利点を活かして、大きな蓄熱体として利用される暖炉もあります。ペチカもそうです。昔ながらの手作り暖炉にはレンガやタイル、石だけで作られてるものが多いですが、現代は鉄との組み合わせによって製品化された、高性能な暖炉や薪ストーブがたくさん流通しています。

石やレンガ等が使われる薪ストーブと暖炉:BRUNNER / HWAM